74歳・筋金入りの節約家。1日1000円暮らしで気づいた「お金」の使い方

画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さんは、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らし。お金を極力使わないケチな生き方=「ケチカロジー」という言葉を生み出し著書も上梓している小笠原さんは、極力ものを持たないように暮らしています。今回は、お金に関する考え方について伺いました。

【写真】1日1000円生活を楽しむ小笠原洋子さん

お金はあるだけあった方がいい?筋金入りの節約家に聞く「お金の考え方」

私はかれこれ20年ほど節約暮らしをしており、1日1000円での生活は自然なこと。そのルールを外すことはめったにありません。そこで、ついお金をたくさん使ってしまう方のことを考えて、使いすぎによる対処法をまとめてみました。

●お金と時間の使い方をしっかり考えてみる

お金の使いすぎを防ぐには、月々の収支を知るだけでも効果があるそうです。「ああ、こんなに使ちゃった。来月は少しでも減らそう」と思えればいい、と。支出を減らすという目的をもって、なにかやってみると、なおいいでしょう。日々の出費額を書き出して月々の合計額も書き出す。前月よりわずかでも減っていれば、励みになるでしょう。

お金を無駄にする人は、時間も無駄にする傾向もあるそう。毎日すべきことの時間配分を整えてみると、だらだら買うことも減るでしょう。

なお、お金持ちへの嫉妬と、見栄を張るためにお金を使うのは、いちばんつまらないことだと実感しています。嫉妬や見栄は、表面化しないので、この際こっそり取りやめにしてみましよう。

次に目標を決めて「貯める」ことです。すぐに買う快楽をちょっと抑えて、貯まるのを待つことに楽しみを見つけてみます。

またお金について学んでみること、その情報をしっかり収集してみることも大切。なにも理解しないまま安易に、資産運用はしない方がいいと思います。カード払いも便利だからと使いすぎには注しながら、お金を守るためにはしっかり使い方を意識することが必要です。

●お金は好き?嫌い?

ところで、お金はお好きでしょうか?

私は好きでありません。「じゃあ、いらない?」と問われれば、「いいえ、必要不可欠で、なければ生きていかれないから、好きじゃないんです」と答えます。

例えるなら、「あなたなしじゃ生きられない」とか「お酒がなければ生きられない」というように情けなさを感じるのです。「それとお金は別でしょう?」と言われそうですね。貨幣経済の世の中であり、それで全社会が成り立っているから、そう思うわけですよね。

でもそれだからといって、だれもが「お金大好き。お金持ちになりたい」と思っているかというと、そうでもない人もなかにはいるのです。お金があればぜいたくなこともできる、気持ちまで豊かになるかもしれませんが、なんでも手に入るのがいいことでしょうか。

●お金は「困らない程度」にあるのが理想

金欲や物欲の落とし穴は、そこに際限がないことです。昨今「大河ドラマ」を賑わせている秀吉の朝鮮侵略。欲とは、その精神的な活用なら意欲という美点にもなりえますが、物欲は人を不幸にさえします。

お金はないよりは、適度にあるのがいい。私は、住まいは雨露をしのぐ程度でいいし、日々食べていければいいというのが理想です。もう少し理想を言うなら、老いたとき困窮しない程度が最高です。お金が入ると、ほとんどがものに還元されてしまいます。食べ物なら脂肪が体につき、ものなら家のなかに蓄積します。だから困らない程度でいいのです。

●お金に支配されない生き方をしたい

老後のための貯蓄に励むことは意義あることですが、子孫のために財産を残すことは、必ずしも最良の事ではないように思います。多すぎる財産をめぐるトラブルは少なくないでしょう。私の父はといえば、自他ともに認める「児孫のために子に美田を残さず」タイプでした。これは、「子孫のために財産を残すと、それに頼って努力をしないので、財産を残さない」という意味です。そのため、私たち子どもたちは懸命に働きました。それでいい場合もあります。

私は低所得者ですが、お金には「困り」たくないのです。普通はお金に困るというと、生活にもっとお金が必要ということになりますが、私が言うのは、お金のことで悩みたくないという意味です。できる限りの対策を講じて、お金から解き放たれた精神生活がしたいのです。お金の事ばかり考えて、お金中心の人生を送るのは残念だと思っています。

そんなことで、私は必要最小限の暮らしを日々心がけて、お金に支配されないようにしています。

2023-10-31T11:08:42Z dg43tfdfdgfd